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2009年12月15日火曜日

ブームから生まれるブーム「1Q84/村上春樹」

売れに売れて、読んでいる人ばかりで、

それでもやっぱり気になって、読んでみたら、面白い。

ブームといってはなんだけど、新興宗教のあり方とか

人がバラバラと自分の人生だけに責任を持つ感じとか

殺すといくことが割とさらっと起こっていくとことか

財産を持つということが、世間の目に見えにくくなっているとことか

マッサージが重要なところとか

仕事と人生があまりにも残酷にリンクしていくところとか

その仕事が割と自分で選べてしまうところとか

ウソみたいな現実が、すぐ隣に音もせずあるところとか

それなりに小さな仕事にもプライドを持って生きているとことか

大きな権力を持つことが大きなあきらめにつながるとことか

天然な子が不思議なことを見通しているとことか

女子が世の中の軸を動かしているという裏のこととか

とかとか

ブームを読んで読んで、そこから確かに今の時代に

書かれた小説であるということをしっかりと感じることができて

で、ちゃんとブームを生んじゃうすごさ。

感心した。

2009年6月14日日曜日

設定がすべて「パラドックス13/東野圭吾」

なんか宇宙規模のすごいことが起こるんだけど

結局、最後まで宇宙規模である意味があまりない。

とにかく人間がいなくなった東京をさまようんだけど

意外と予想外のこととか起こらないものだなあと

淡々と読み進めてしまった。

ウソみたいに谷あり山ありの難所になる都心とか

洪水が起こったときに湖のような

池が行く手をはばんだりとか

人間の力で塗り固められた世界が

すごいしっぺ返しを食らうんだけど、まあ予想の範囲内。

聞いたことあることとか見た事あることとか

どこかで聞いたことのあるシミュレーションの中を

動く人間の想いとか業とかが読めるといいなあと

思っていたんだけど、そうもならず。

東野圭吾もののドンデン返しは、ここでそれいる?

みたいなことが割りと多いだけど、今回も再び。

だからこそ、この人が描く気持ちみたいなものの

ある意味のピュアさとかが好きなんだけど、

ハイパーSFすぎて、人間くささがどんどん減ってしまったのが

残念な感じだった。連載って毎回ヒット打つの難しいのね。

2009年5月29日金曜日

埋め合わせるもの「青山娼館/小池真理子」

高級とはいえ、身体を売る商売には変わらない。

でも、それで埋められるキモチをいうものもあると

きっと描きたくて、この小説は書かれたと思う。

思うんだけど、なんか悲劇を背負ってないと、

その商売にいかないという時代じゃないのが

どうにもひっかかる。肌を、身体を開くことで

満たされることがあるのは分かる。

でも、そんなに重たい重たい話ばかりではないのも

事実で、登場人物がいちいち深い悲しみを

背負っているから、この商売に身を賭してよいのだ

みたいな変なステレオタイプが、心にグサッと

入ってこなかったのが残念だ。

中で書かれている、金持ちたちの異常セックス描写が

本当にふるっていて、究極はもはや性器と性器の

ふれあいは遠く先のもので、それなしでいかに

感じきるかみたいなチャレンジになっていくのだなあと

妙な納得をしてしまった。

バスローブ着せて、そのまま風呂入らせて、

そこにバラを次々に投げ込んで、

裸を見えなくして(というか裸も見えてないんだけど)

それをみながらオナニーするという、どんな世界だ?

いったいぜんたい。

取材に基づくとは「大地の子/山崎豊子」

もはや、本当にこんなことが?という感覚を

もってしまう平和ボケ世代。

実際に起こったことを取材を通して、

話の中に封じ込めていくのが山崎さんならば

あまりにあんまりな非情な事実。

残留孤児たちが受ける差別と実際に日本が行った非道が

バランスをもって天びんにかけられているならば

神様の天びんはあまりにも残酷に、子どもたちに

苦難を強いていく。何も解らずに自分の人生が

嵐の真っ只中にさらされている1950年代。

本当に命がけだったり、本気で何かに取り組む、

瞬間に僕らはどっしりと向き合っているだろうか?

中国に吹き荒れる、歴史の流れにもう翻弄されまくる

ひとりひとりの人間。無力でどうしようもないのに

自分の人生を諦めないすさまじい想い、志。

結局は、人生を形作っていく、人の絆。

それも、血とかそんな単純なものでは語れない

生きることの本質に迫る、結びつき。

最後に「わたしは大地の子だ」という主人公の一言の

あまりにも重いタイトルせりふに言葉を失った。

信念と自分の人生を自分で切り開く力を大事にしたい。

2009年4月28日火曜日

信念なんて報われぬ「沈まぬ太陽1〜5/山崎豊子」

正しく生きることと豊かに生きることが

必ずしも一致しないこの現代を膨大な取材から

あぶり出して、小説に仕立て上げる。

その作業は絶望的に夢なんてなかったりする

会社内の権力闘争の様を浮き彫りにしていく。

自分の信じる道を進めば進むほど

仕事の環境は厳しくなり、閑職においやられ

家族とは離ればなれになり、手の中には何も残らない。

本当に切ない。

海外赴任先から日本に戻る奥さんを見送るシーンが

あるんだけど、すごい雨の中、自分の背中がビショビショに

なって、子供を飛行機のタラップまでぬれないようにする姿を

見て、思わず名前を呼ぶのだけれど、雨が強くて奥さんには

聞こえないのね。

もう、声でないわ。切なくて。

正しいことしてんのに。

いい人、ちゃんとした人間関係はすべて手元に残るけれど

それを豊かな人生の作物だと言い切るには

あまりにも恵まれなさすぎて、現実的にすぎて、つらい。

一巻から五巻まで一気読み。

2009年4月25日土曜日

どこまでも悪は悪「Cの福音/楡 周平」

アメリカから麻薬を密輸する男の

冷酷な完全犯罪術。

人間、善も悪もあるよねと思うけれど

一度すみわけた人間は意外とどちらも抱えながらなんか

生きたりしないんだなあ。ほんと。

いいもんはいいもん。

わるもんはわるもん。

淡々とくみ上げられていく悪いことするための仕掛けとか

だからこそリアルだと感じて、そういう世の中だなあと。

不思議なことにそこに嫌悪感もない。

そして、着々とお金がそのステージに集まっていくんだよな。

うん、まるで違和感もない。

中で出てきた「人に口を割らせるための凄い方法」というのが

また奮っていて、まずは麻酔で身体の痛みを感じないようにして

身体をナイフでざくっときるんだそうだ。見えるとこを。

痛くもないのに、自分の身体が割れて、そこから血がどぼどぼと

たれていくのを見るのは、もうどうにもならず恐怖らしい。

これは、怖い。目の前で身体をさばかれていくのは、かなわない。

2009年4月4日土曜日

みんなが自分の人生を「孤宿の人/宮部みゆき」

大きな渦に巻き込まれながらも、

結局は自分の身の回りですべてが進み、

見える範囲の人たちに助けられ、

本人も分からないうちに少しづつ大きくなっていく。

そんなことを感じられる本だった。

実際に起こっていることとは全く違う次元で

人間の成長って起こっているのね。

江戸時代の話で、江戸から偉い人が流されてくると

いう設定で話がはじまるんだけど、

なるほどなあと思ったのは、悪いことが起こったときに

何かひとつ原因があると、もう何もかもがひとつの原因に

結びついていくということ。

江戸の罪人が、厄を運んできた、あいつは鬼だみたいな

噂が流れて、たまたま起こるいろんな災難がすべて

そのお偉いさんのせいになる。

でも、よく考えてみると、そんなことないんだよなあ。

悪いことって前からあったし、たまたま重なっても

次には実は毎回、新しい時間が流れるわけだし。

そんな負の連鎖の中でも、人が前に向かって変わっていき、

新鮮な人間関係が生まれていくという面白さがあった。

2009年3月31日火曜日

力はつくの?「交渉力/佐藤優」

どんな人が何のために読むのかは謎だし、ビジネス書には入らないと

思うのだけれど、なぜかビジネス書に「力」ものの一環として並ぶ。

ノンフィクションとして実名で外交舞台の様々を描いていて

その時々の人となりとか鋭さ、バランスなどが分かり面白い。

切れすぎてもダメになるし、愚鈍だから生き残るという不思議。

まあ、佐藤優側の目線だけで出来ている本なので、

ロシアスクール万歳、アメリカスクールくたばれ、みたいな気配はあって

そこはフェアではないけれど、信念があっていいとも思う。

何よりもドミノのように、ひとつの外交戦略が世界中に影響を及ぼし、

波紋のごとくに、うねりを生んでいく様は圧巻。

そして、国と国との間柄は、今でも圧倒的に個人のポテンシャルを

握っているということにいまさらながらに驚き、うらやましくも思う。

あとは、イスラエルという国の、政治的なあり方が非常に不安定かつ

利用されやすくしやすい、独特な形にグッときています。

イスラエルって難しい政治的な問題なんかと言いましたけど

実際は、そこひとつの思惑もあるから貫ける態度があるのだと思います。

しっかり、イスラエルのこととか追い込んで知っておきたいなあ。

政治家と官僚の、現実とドロドロと向き合いながらも

圧倒的に理想主義者的なドロドロもあるところがリアルだった。

必ずしも、勝ち負けだけでなく、カブトムシとクワガタについて

意外なことを知った。