2009年4月28日火曜日

信念なんて報われぬ「沈まぬ太陽1〜5/山崎豊子」

正しく生きることと豊かに生きることが

必ずしも一致しないこの現代を膨大な取材から

あぶり出して、小説に仕立て上げる。

その作業は絶望的に夢なんてなかったりする

会社内の権力闘争の様を浮き彫りにしていく。

自分の信じる道を進めば進むほど

仕事の環境は厳しくなり、閑職においやられ

家族とは離ればなれになり、手の中には何も残らない。

本当に切ない。

海外赴任先から日本に戻る奥さんを見送るシーンが

あるんだけど、すごい雨の中、自分の背中がビショビショに

なって、子供を飛行機のタラップまでぬれないようにする姿を

見て、思わず名前を呼ぶのだけれど、雨が強くて奥さんには

聞こえないのね。

もう、声でないわ。切なくて。

正しいことしてんのに。

いい人、ちゃんとした人間関係はすべて手元に残るけれど

それを豊かな人生の作物だと言い切るには

あまりにも恵まれなさすぎて、現実的にすぎて、つらい。

一巻から五巻まで一気読み。