2010年4月6日火曜日

手触りが大切な画「断面の世代/束芋」@横浜美術館

「断面の世代」っていうのは、束芋さんの造語で

まさに1970年代、自分の含まれる年代のことを

指しているらしい。当然、「団塊の世代」とも関係してくる。

本人によれば、以下のような感じ。

団塊の世代の方々は、
太巻きの中の玉子焼きやかんぴょうといった、
それぞれが具の1個1個なんです。
私たちの世代も、同じ目標として太巻きになることを
目指しているのですが、個人としてはすべての要素を持っている
太巻きを切り分けたときにできる断面のようなもの。
一応全て持ち合わせているので何でもできるって
思い込んでいるんだけど、よく自分自身を見てみると
薄っぺらい二次元の断面でしかない。
集まればいちおうは三次元の太巻きになれるんだけど、
それぞれがいろんな形、色々な大きさをしているから、
いびつな太巻きになるかもしれない。
逆に団塊の世代は、それぞれが玉子焼きだったり
かんぴょうだったりキュウリだったりして個性的だから、
てんでバラバラになりかねない。
だけど、その多様な具をまとめる米だとか海苔だとかっていう
リーダー的な存在がいれば、ひとつの太巻きになれる、
みたいなイメージです
※横浜美術館/国立国際美術館『束芋:断面の世代』より引用

横浜美術館の吹き抜け全体を使って、団地の様子が映し出されていて

入った瞬間に居心地が悪くざわざわする。

本当にこの人の作品は、触感がある。抵抗感。

神経症みたいな筆致がもぞもぞと動いて絶望的な世界に

移り変わっていくアニメーションは、本当に暗く美しい。

確かにキレイだ。

ワンルームがきたなく汚れ、タンスから無数のゴミが散り、

血が流れ、人の身体がバラバラになろうとも、

世界は必ず美しさを持って立ち現れる。不思議。

骨が水面から顔を出すと、花を咲かせるやつとか

女の髪でいっぱいになったスクリーンをかき分けると

そこに日常の渋滞する交差点があったりとか

キレイに整わない日常の中に確かに「生」があるのは

みごたえたっぷり。

それにしても、この人のキャリアは本当にすごい。

うらやましいほどの、前人未到。あやかりたい。

長野に住んでいるあたりも、いけてる。



本気でパンクで懐深い「歌舞伎座さよなら公演 十二月大歌舞伎」@歌舞伎座

番組は下記な感じ。まあ、すごいすごい。

出てくる人、出てくる人、半端な方がひとりもいない。

さすが、さよなら公演。ちゃんと全力だなあ。

時代的にも古いのから、最新まで取り揃えて、

歌舞伎がいかに幅広い歴史からエキスを吸って

生き延びているかを肌で感じさせてくれた演目だった。


一、操り三番叟(あやつりさんばそう)

             三番叟  勘太郎
              後見  松 也
              千歳  鶴 松
               翁  獅 童


サイレントコメディなうえに、まあ身体がよく動く。

関節とかグニャグニャパキパキと漫画のよう。

操り人形を演じるんだけど、パントマイムとかなくても

自前でこういう文化があるのって面白い。

操り人形のパントマイムやってみたら、よくない?って

思いつくあたりがすさまじい雑食性。

今回は、席がステージに近かったので、

脚にかかる加重とか床をつかむ指とか感じることができて

歌舞伎の身体性を改めて確認できた。


二、新版歌祭文

  野崎村(のざきむら)

              お光  福 助
              お染  孝太郎
            後家お常  秀 調
              久作  彌十郎
              久松  橋之助


よくできたワイドショー話で、農家の娘が好きな男と

一緒になれるとウキウキしていると、都会から超かわいい

姫がその男を追ってやってきちゃうという。

その農家の娘のきゃぴきゃぴした感じとかが

異常に偏見たっぷりにバカにしてて面白い。

うまかったなあ、ほんと、この日の役者さん。

セットもぐるぐる回って、最後なんか家の裏の

川の土手に変身して船に乗って去っていくという

スペクタクル。アイディア、アイディア、

驚くことならなんでもやってやろうという精神が

素晴らしい。


三、新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん )

            山蔭右京  勘三郎
            太郎冠者  染五郎
            侍女千枝  巳之助
            侍女小枝  新 悟
           奥方玉の井  三津五郎


こっちはコント。勘三郎ってほんと面白い。

声がそもそも面白いのと、リズムがくだらない。

なんかいちいちふざけているんだと思うんだけど、

ムダなことを加えて加えて、そこに溺れる面白さ。

でも、嫌みじゃないあたりが名優なんだろうなあ。

浮気して帰ってくる当たりの、喜ぶ男のダメな感じとか

もうジャストミートな様子で、楽しい。


四、大江戸りびんぐでっど(おおえどりびんぐでっど)

              半助  染五郎
              お葉  七之助
            大工の辰  勘太郎
           根岸肥前守  彌十郎
            遣手お菊  萬次郎
             丁兵衛  市 蔵
             与兵衛  亀 蔵
             佐平次  井之上隆志
           紙屑屋久六  猿 弥
          和尚実は死神  獅 童
          石坂段右衛門  橋之助
            女郎お染  扇 雀
           女郎喜瀬川  福 助
             四十郎  三津五郎
              新吉  勘三郎

宮藤官九郎が書いた新作。江戸にゾンビが現れる。

というとんでもない話。しかもクサヤの汁を浴びると。

いやあ、歌舞伎書いても、まったくぶれないあたりが

需要と供給だなあ、発注する方もしやすいなあと思う。

上がりが思った通りになるなんて安心だもの。

そして、もう話も何もかもめちゃくちゃだけど

しっかり歌舞伎にしていく役者陣のものすごい

懐の深さ。伝統芸能の中でも足腰の強さ。

旬なものを食べて吐き出さずに自分自身を変容させつつ

自分の栄養にしてしまう。

ものすごいアレルギー反応はあっただろうからなあ。

ほとんどが特殊メイクをした(ゾンビメイク…)歌舞伎って

いやあ、いいものを見た。

とりあえず、出来というよりもスタンスに圧倒です。

歌舞伎というものの。

なんでも壊してみなきゃ分からないよねえ、

いけるかいけないかも。

常設だけどさあ「ZED/シルク・ド・ソレイユ」

テントのやつは何回か見てて、その度に結構感動する

シルク・ド・ソレイユ。話に聞くラスベガスのやつは

ものすごそうで、もうそりゃあ羨ましい。「O」とか。

常設ってことで、とっても期待していったんだけど。

ん?ん??

なんか装置がテントのやつとさほどスゴさが変わらない。

こっそり床がいくつも変わったりするようなんだけど、

それってすごいの?噂では、床ごとガンガン動いたりするらしいのに。

アメリカだと。

正直、やっている演目は割とみたことある大道芸なので

演出でみていくものだと思うんだけど、

ワイヤーアクションもブラブラしているだけで

あまり3D的な動きもなく、おとなしめ。

脅かしでいえば、オープニングがピークかなあ。

ステージ全面を覆っていた幕がばーっと美しく消え去る。

ただ、これって、東大でお芝居やってたときに駒場でも見た。

アイディアで想像できないところではないし。

歌もバカウマい感じではなく、音響がいまいちなのか、

心に入ってこない。正直、あれだ、オリエンタルランドは

きっとだまされ気味だなあと思った。たくさんお金払って

セカンドベストが来た感じ。まあ、仕方がない。

観光のセットになっているらしく、席は満員。

グッズもものすごく売れていた。ビジネスとしてはいいのか。

これで。

テーマ設定とかは参考にあるので、下記に。

人生は冒険。そこに、 詩 ( うた ) が生まれる。
彼の名は、Zed(ゼッド)。
彼が旅する世界は、天と地。
そこであらゆる生命と、
大いなる女神と、スフィンクスと…
命の躍動に出会います。
さまざまな経験を重ね、
彼自身が成長すると同時に
彼が生きた天と地という
2つの世界がひとつに結ばれます。
彼の経験と彼が生きた世界のすべてが、
心で感じずにはいられないもの。
この叙情あふれる冒険の旅を通じて誰もが人間の、
人生の経験の本質に迫っていくことができるでしょう。