2010年4月7日水曜日

大好物の光ものでした、やはり「あなたがであうとき/オラファー・エリアソン」@金沢21世紀美術館

そもそも大好きなオラファー・エリアソン。

他のどこにもまわらずに、ここのためだけに展示を作った。

らしい。

なんと贅沢な。行ってみて、なるほどと。

ひとつひとつの作品は既出のものがあるんだけど、

あの、どこ歩いてもよくて、どこにいるのかも分からなくなる

美術館だからこそ良さががあるのだなあ、この展示。

ふっと、空間に入ったときの出会いがランダムだからこそ

はっとさせられるという仕掛けの数々。

角をまがれば、絶景とか。

ドアをあければ、異空間とか。

そんな自然の状態でよくあるけれど、胸を打つ感覚を

ホワイトキューブで実現するのは、この建築があったから

なのだろう。

オラファー・エリアソンの説明を。以下に。


光、影、色、霧、風、波などの自然界に見られる
さまざまな要素によって特徴づけられるエリアソンの作品群は、
科学的な仕組みを問うものではなく、
現象を作り出す仕掛けは作品の中で明らかされています。
そのために、人々は却って「見る」という行為を純粋に楽しみ、
取り巻く環境の中に新しい発見や体験をする
機会とすることができるのです。
また、エリアソンはSANAAが設計・デザインした美術館を
建築的・機能的に深く読み解き、
金沢21世紀美術館を成り立たせる、
さまざまなファクターに大胆に挑みます。


気に入った作品の備忘録を。


《あなたが出会うとき》2009年

広い空間に、光がぱーっと開けてくる。

そして、さーっと閉じていく。

自分が見えてくる。現れる。

誰かの姿が照らし出される。また消える。

ゆっくりした動きだけれど、確実に何かに

コントロールされている感じを味わえる。



《ゆっくり動く色のある影》2009年

3つの色の影が重なり、離れ、影なのに独立した色を持つ。

これも、ひとりがいろいろな色を持つってことももちろんだし

同時にいる多くの人たちとともに楽しみ干渉しあうことで

世の中がどんどん多様に美しく花開いていくような気分に。

いちいち単純なのに、深く哲学を語れるのが、

この人の作品の面白いところなんだよなあ。

だから、もうべらべら気づいたことを喋り尽くしておく。


《見えないものが見えてくる》2009年

霧に満ちた部屋に、一筋の光がすーっと通る。

のだけれど、自然ではあり得ない形で、その光の線は

プツリと切れる。こういう非自然であることの不自然さを

ハッと意識させるのも、うまいところ。

単純に、ロスコのようなものが入らないよう、

透明な箱が置いてあって、そのため光の線が見えないんだけど

いやあ、美しく世界の仕組みをシャープにするのって

センスだなあと感心。


《動きが決める物のかたち》(まもなく)(いま)(それから)

ストロボでトロッとしたオイルような

プラスチック材料の噴水をちかちかすると

その瞬間だけうまれる彫刻のように見える。

超美形で、はかない、彫刻でありオブジェ。

見た事もない質感と量感。あれは軽いのか?重いのか?

つるつるしているようにもみえるけど

ぬるっとしているようにもみえるという謎の代物。

接することができる物体とは違う、物体を生み出すという

信じがたい離れ業だった。


《水の彩るあなたの水平線》2009年

宗教施設かのような作品だった。

暗い部屋。

バカでかい円形の部屋の真ん中に

バカでかい水盆。そのさざなみに反射して

虹色の光が部屋の壁にもうひとつの波を描く。

人の気配がするたびに、その波は大きく変動する。

人が自分の空間に入るたびに、

よくもわるくも、明るい色も暗い色も

同時にゆらゆらと反応する。まさに他者によって、

自分の世界は、変容するんだろう。

いやあ、すごい、本当にすごい、すさまじい。



あれこれと

感動した。

難しくないけど、深いなあ。

だから、すごい。

何より感性にくるもんなあ。

それにしても、相変わらず、光ものには

とことん弱いものだ。