2010年4月6日火曜日

本気でパンクで懐深い「歌舞伎座さよなら公演 十二月大歌舞伎」@歌舞伎座

番組は下記な感じ。まあ、すごいすごい。

出てくる人、出てくる人、半端な方がひとりもいない。

さすが、さよなら公演。ちゃんと全力だなあ。

時代的にも古いのから、最新まで取り揃えて、

歌舞伎がいかに幅広い歴史からエキスを吸って

生き延びているかを肌で感じさせてくれた演目だった。


一、操り三番叟(あやつりさんばそう)

             三番叟  勘太郎
              後見  松 也
              千歳  鶴 松
               翁  獅 童


サイレントコメディなうえに、まあ身体がよく動く。

関節とかグニャグニャパキパキと漫画のよう。

操り人形を演じるんだけど、パントマイムとかなくても

自前でこういう文化があるのって面白い。

操り人形のパントマイムやってみたら、よくない?って

思いつくあたりがすさまじい雑食性。

今回は、席がステージに近かったので、

脚にかかる加重とか床をつかむ指とか感じることができて

歌舞伎の身体性を改めて確認できた。


二、新版歌祭文

  野崎村(のざきむら)

              お光  福 助
              お染  孝太郎
            後家お常  秀 調
              久作  彌十郎
              久松  橋之助


よくできたワイドショー話で、農家の娘が好きな男と

一緒になれるとウキウキしていると、都会から超かわいい

姫がその男を追ってやってきちゃうという。

その農家の娘のきゃぴきゃぴした感じとかが

異常に偏見たっぷりにバカにしてて面白い。

うまかったなあ、ほんと、この日の役者さん。

セットもぐるぐる回って、最後なんか家の裏の

川の土手に変身して船に乗って去っていくという

スペクタクル。アイディア、アイディア、

驚くことならなんでもやってやろうという精神が

素晴らしい。


三、新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん )

            山蔭右京  勘三郎
            太郎冠者  染五郎
            侍女千枝  巳之助
            侍女小枝  新 悟
           奥方玉の井  三津五郎


こっちはコント。勘三郎ってほんと面白い。

声がそもそも面白いのと、リズムがくだらない。

なんかいちいちふざけているんだと思うんだけど、

ムダなことを加えて加えて、そこに溺れる面白さ。

でも、嫌みじゃないあたりが名優なんだろうなあ。

浮気して帰ってくる当たりの、喜ぶ男のダメな感じとか

もうジャストミートな様子で、楽しい。


四、大江戸りびんぐでっど(おおえどりびんぐでっど)

              半助  染五郎
              お葉  七之助
            大工の辰  勘太郎
           根岸肥前守  彌十郎
            遣手お菊  萬次郎
             丁兵衛  市 蔵
             与兵衛  亀 蔵
             佐平次  井之上隆志
           紙屑屋久六  猿 弥
          和尚実は死神  獅 童
          石坂段右衛門  橋之助
            女郎お染  扇 雀
           女郎喜瀬川  福 助
             四十郎  三津五郎
              新吉  勘三郎

宮藤官九郎が書いた新作。江戸にゾンビが現れる。

というとんでもない話。しかもクサヤの汁を浴びると。

いやあ、歌舞伎書いても、まったくぶれないあたりが

需要と供給だなあ、発注する方もしやすいなあと思う。

上がりが思った通りになるなんて安心だもの。

そして、もう話も何もかもめちゃくちゃだけど

しっかり歌舞伎にしていく役者陣のものすごい

懐の深さ。伝統芸能の中でも足腰の強さ。

旬なものを食べて吐き出さずに自分自身を変容させつつ

自分の栄養にしてしまう。

ものすごいアレルギー反応はあっただろうからなあ。

ほとんどが特殊メイクをした(ゾンビメイク…)歌舞伎って

いやあ、いいものを見た。

とりあえず、出来というよりもスタンスに圧倒です。

歌舞伎というものの。

なんでも壊してみなきゃ分からないよねえ、

いけるかいけないかも。

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