番組は下記な感じ。まあ、すごいすごい。
出てくる人、出てくる人、半端な方がひとりもいない。
さすが、さよなら公演。ちゃんと全力だなあ。
時代的にも古いのから、最新まで取り揃えて、
歌舞伎がいかに幅広い歴史からエキスを吸って
生き延びているかを肌で感じさせてくれた演目だった。
一、操り三番叟(あやつりさんばそう)
三番叟 勘太郎
後見 松 也
千歳 鶴 松
翁 獅 童
サイレントコメディなうえに、まあ身体がよく動く。
関節とかグニャグニャパキパキと漫画のよう。
操り人形を演じるんだけど、パントマイムとかなくても
自前でこういう文化があるのって面白い。
操り人形のパントマイムやってみたら、よくない?って
思いつくあたりがすさまじい雑食性。
今回は、席がステージに近かったので、
脚にかかる加重とか床をつかむ指とか感じることができて
歌舞伎の身体性を改めて確認できた。
二、新版歌祭文
野崎村(のざきむら)
お光 福 助
お染 孝太郎
後家お常 秀 調
久作 彌十郎
久松 橋之助
よくできたワイドショー話で、農家の娘が好きな男と
一緒になれるとウキウキしていると、都会から超かわいい
姫がその男を追ってやってきちゃうという。
その農家の娘のきゃぴきゃぴした感じとかが
異常に偏見たっぷりにバカにしてて面白い。
うまかったなあ、ほんと、この日の役者さん。
セットもぐるぐる回って、最後なんか家の裏の
川の土手に変身して船に乗って去っていくという
スペクタクル。アイディア、アイディア、
驚くことならなんでもやってやろうという精神が
素晴らしい。
三、新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん )
山蔭右京 勘三郎
太郎冠者 染五郎
侍女千枝 巳之助
侍女小枝 新 悟
奥方玉の井 三津五郎
こっちはコント。勘三郎ってほんと面白い。
声がそもそも面白いのと、リズムがくだらない。
なんかいちいちふざけているんだと思うんだけど、
ムダなことを加えて加えて、そこに溺れる面白さ。
でも、嫌みじゃないあたりが名優なんだろうなあ。
浮気して帰ってくる当たりの、喜ぶ男のダメな感じとか
もうジャストミートな様子で、楽しい。
四、大江戸りびんぐでっど(おおえどりびんぐでっど)
半助 染五郎
お葉 七之助
大工の辰 勘太郎
根岸肥前守 彌十郎
遣手お菊 萬次郎
丁兵衛 市 蔵
与兵衛 亀 蔵
佐平次 井之上隆志
紙屑屋久六 猿 弥
和尚実は死神 獅 童
石坂段右衛門 橋之助
女郎お染 扇 雀
女郎喜瀬川 福 助
四十郎 三津五郎
新吉 勘三郎
宮藤官九郎が書いた新作。江戸にゾンビが現れる。
というとんでもない話。しかもクサヤの汁を浴びると。
いやあ、歌舞伎書いても、まったくぶれないあたりが
需要と供給だなあ、発注する方もしやすいなあと思う。
上がりが思った通りになるなんて安心だもの。
そして、もう話も何もかもめちゃくちゃだけど
しっかり歌舞伎にしていく役者陣のものすごい
懐の深さ。伝統芸能の中でも足腰の強さ。
旬なものを食べて吐き出さずに自分自身を変容させつつ
自分の栄養にしてしまう。
ものすごいアレルギー反応はあっただろうからなあ。
ほとんどが特殊メイクをした(ゾンビメイク…)歌舞伎って
いやあ、いいものを見た。
とりあえず、出来というよりもスタンスに圧倒です。
歌舞伎というものの。
なんでも壊してみなきゃ分からないよねえ、
いけるかいけないかも。
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