2009年3月31日火曜日
力はつくの?「交渉力/佐藤優」
思うのだけれど、なぜかビジネス書に「力」ものの一環として並ぶ。
ノンフィクションとして実名で外交舞台の様々を描いていて
その時々の人となりとか鋭さ、バランスなどが分かり面白い。
切れすぎてもダメになるし、愚鈍だから生き残るという不思議。
まあ、佐藤優側の目線だけで出来ている本なので、
ロシアスクール万歳、アメリカスクールくたばれ、みたいな気配はあって
そこはフェアではないけれど、信念があっていいとも思う。
何よりもドミノのように、ひとつの外交戦略が世界中に影響を及ぼし、
波紋のごとくに、うねりを生んでいく様は圧巻。
そして、国と国との間柄は、今でも圧倒的に個人のポテンシャルを
握っているということにいまさらながらに驚き、うらやましくも思う。
あとは、イスラエルという国の、政治的なあり方が非常に不安定かつ
利用されやすくしやすい、独特な形にグッときています。
イスラエルって難しい政治的な問題なんかと言いましたけど
実際は、そこひとつの思惑もあるから貫ける態度があるのだと思います。
しっかり、イスラエルのこととか追い込んで知っておきたいなあ。
政治家と官僚の、現実とドロドロと向き合いながらも
圧倒的に理想主義者的なドロドロもあるところがリアルだった。
必ずしも、勝ち負けだけでなく、カブトムシとクワガタについて
意外なことを知った。
2009年3月29日日曜日
自分のセンス「いのうえ歌舞伎・蜻蛉峠」@赤坂ACTシアター
偶然にも2回見る機会があったんだけど、なかなかねえ。
割といいとこまでいったりもするんだけど、ふとしたところで
気持ちがぐらぐらいくところまで行けなかった。
音とセリフの熱さであおっていくあたりとか、異常なくらい
自分の演出とかぶったりするんだけど、逆にそこに意識いくと
どうにも涙がひいてしまう。もったいない。ああ。もったいない。
個人的には長いおさえたセリフからどんどんもりあがったセリフを
女子に語ってもらうのが、なによりツボっぽいと改めて気がつく。
あとは、高田聖子のこの集団でのすごみ。
劇団で、そのカラーを背負う存在の役者さんがやり続けることの
不自由さと圧倒的なパワーとの狭間でしっかりと立つ、
価値に打たれた。そりゃあ、古田新太も安心だよ。
もちろん古田さんはすさまじいです。ありゃあ、鬼だ。
存在感とかうまさとか、もう常人の域を越えているもの。
かっこよく見えるもの。あれだけかっこよくないのに。
舞台の最たるもんだなあ、あのかっこよさは。
このお芝居も距離が大事だったようで、近い席よりも
ちょっと離れて全体を見れて、集団の騒ぎ立てる感じを
感じることができる方が楽しめる感じだった。不思議だ。
2009年3月28日土曜日
2009年3月27日金曜日
すさまじい深さとプレゼンテーション「杉本博司/歴史の歴史」@金沢21世紀美術館
ものを生み出す人、誰にでもあるとすると、
結構、その深さが出たりするものだと思う。
自分の惹かれてきたものたちを一同に会してみたときの
そこにあらわれる自分自身の歴史と実際に時代を刻んできた
そのもの自体の持つ歴史とがキレイにシンクロしていって
時間軸がぐちゃぐちゃになりつつ整理されていき
アートの作品へと昇華していく様は、人の人生そのものを
どうだ!とみせつけられているようで、心を揺さぶられる。
そこにある価値観の美しさとか何を大事にするのかという思いとか
杉本博司の美的センスの圧倒的高みを目の当たりにしつつ
作品そのものの見え方さえも決定的に変えるプロモーションとしての
素晴らしい戦略も感嘆する。
sea scapeに囲まれた中心に十一面観音があるんですよ。
化石と宇宙食が同列に語られる「美」の世界って。
何百年も生き抜いて生きた寺の柱の時間を感じろと
そっと立てられて、にょきにょきと部屋にあるんです。
肖像シリーズの脇にはタイム誌の表紙コレクションがあり、
小さな厨子の中には、現在作られたガラス球を閉じ込め、
死者の書も、華厳経も、月の写真も、同列に軸にされている世界。
キレイだと思う世界で、しっかりと立ち、勝負しきる。
本当に打たれた。
自分にとって、その世界はいったい何なのか?
何とよりそう人生なのか?
深いこと考えさせられる展示だった。
2009年3月24日火曜日
初恋の人からの手紙。意外と台詞とか秀逸。
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翼、ひさしぶり。
今でもデートのたびに水筒を持っていますか?当時、おばちゃんみたいだった翼をなつかしく思います。
少し上からものを言う翼が「スタイルだけは一流だな」などと失言してお別れすることになったあの日から、もう19年が経ったのですね。月日が流れるのは早いものです。
あ、そうそう、お手紙を書いたのには特に理由はないんです。ただ部屋の掃除をしていたら翼からの昔の手紙が出てきたから、なつかしくなって。びっくりさせてごめんなさい。
今振り返って考えてみると、結局翼って、私に興味がなかったんじゃないかなぁと思います。私から何も言わなければ連絡は全然くれないし、私が翼の財布からお金を盗んでも気付かないくらい。あのころ寂しがっていた私に、慰めようとして「寂しいなら寂しいと思わなければいいんだよ」なんて言ってましたね。今でも子供じみているのかなぁと想像すると少し笑いがこみあげてきます。
そういえば翼にとって初恋の相手が私だったんですよね?最初のころの翼は、なんだかキスするときも勢いありすぎて、あのときは少し怖かったんですよ。慣れてくるとやけに自信をつけていましたね。「おれうまいだろ」って(笑)。
付き合いはじめたころ、翼はいきなり「おれはおまえを最初で最後の女にするつもりはない」って言っていましたね。そういうことを平気で言えてしまうところ、今でもきっと変わらないんだろうなぁと想像すると、少し今の翼の人間関係が心配になります。
翼との恋愛から得たものが何なのかなぁと振り返ると、たくさんのものがあることに気付かされます。警戒すべき男性の見分け方などは、翼のおかげで実践的に身に付いたのだと、日々実感しているところです。どうもありがとう。
いろいろ書きましたが、私は翼が大好きでした。これからも翼らしさを大切に、あと当時本気でやっていたパントマイムの練習は続けて(笑)、いつか幸せになってください。
またいつか会いましょう。では。
P.S. 付き合うとすぐ彼女をプールに誘うらしいですね。噂で聞きました。
2009年3月18日水曜日
2009年3月17日火曜日
2009年3月12日木曜日
自分の命を投げ打って「7つのおくりもの」
そもそもプライベートを様々な形でチェックされて
品定めされたうえで、ある贈り物をされるというシステムというか
主人公の思いつきもどうなんだろう?
まあ、書いちゃうと、
自分の命を投げ打って、他の人に自分の身体をあげるんだけど
勝手によくわからない人にあげるのも嫌だから
身元調査を自分自身でやって、自分のお眼鏡にかなった人にだけ
臓器をあげるという、なんともなんともな話。
しかも、自殺して。
しかも、その動機が自分が運転ミスをして婚約者を殺してしまったから。
どうなの?背負わないで、そんな人生を歩もうとする感じ。
あと、相手を徹底的に調査するっていうのも微妙。
どれだけ偉いんだと。人間を値踏みするのって、どうなんだ?
なんか気分の悪い話だった。
2009年3月10日火曜日
不思議に景色が見えた時代「原良介展」@東京オペラシティアートギャラリー
妙なところにつながっている風に見えたりしたと
思い出した。そんな個展。
森のなかを歩いていると、いつのまにか森の木々と草との
緑がとけあって、なんだかひとつのるつぼになったりして
怖さとか不思議さとか圧倒的に他のものに囲まれる感じが
ポップに描かれていてよかった。
一瞬、高木さんを思い出したけど、空気のキラキラとか
生き物のゆらゆらが高木さんの方が個人的にはぐさっと刺さった。
言い方が悪いけれど、自分にも見える景色はいらないんだなと
個人的に好みなアートが強く提案型であることを感じた。
突然ぽっかりと開くパラレルワールドとか
ぐねぐねとうずまく先にあらわれるもうひとつの現実とか。
いつのどの瞬間を切り取ったりしたものなのかが
なんとなくでも感じることができたら、もっと楽しめたと思う。
いろいろいっても作品は好きなんだけど。
2009年3月9日月曜日
正面で出来ていた「パイパー/NODA MAP」
一回目はすごい前だったんだけどサイド寄りの席で
二回目はド正面。で、これが正解だった。
このお芝居、圧倒的にどうやら正面でできていて、群舞なんかも
照明の具合とかが非常にシビアな当たりになっているから、
芯ずれると、もうまるで良さがでない。まあ、ある意味総合芸術?
演技の方も、がぜんテンポよくなっていて、しかもお互いに安心して
セリフをやりとりしているから、盛り上げポイントでしっかりあがる
ロングランの良さが十分に出ている感じだった。
ただ、泣けないなあ、やはり。
すごさは増していた。世界観とか人が群がる集団心理とか。
でも、おそらく人が固まって何かに向かうことにリアリティがないんだな。
自分のなかで。
だから、そこに恐れとかない。葛藤も感じない。
それで心がぐらぐらしないんだなあ。
うまいなあ、うまいなあと感じる変な公演だった。
最後の2人(宮沢りえ&松たか子)のかけあいがワークショップによる
イメージコラージュみたいになっていて、それがものすごく頭いい感じで
詞として音が気持ちいいわけじゃないのも、後味に大きく響いてる気が。
よかったんですよ。
2009年3月6日金曜日
アンシンメトリー「ハルフウエイ」
もてる髪はアンシンメトリーで3Dな感じなのね。
と改めて思ったこの作品。北川悦吏子脚本&監督。
といいつつ、裏で岩井俊二がロケーションも画角も
きっと決めているに違いないと勘づく作品。
プロデューサーらしいんだけど、矢面に立たず戦う術だな。
北海道が舞台なんだけど、もう完全に画が多摩川で
地方を知らんなあとつくづく思う。根が都会。
なんか川べりの抜けがよすぎるんだな。
地方の川べりは、ミスチルのPVみたいにすがすがしくなんか
ないのだ、絶対に。
もっとどうしようもないじとっとした感じがそこにあるんだなあ。
でも、あれは地方出身じゃないと分からない
抜け出せない様相なのよ。
びっくりするくらい途中で終わるからハルフウエイなのか?
ハーフウエイをハルフウエイと間違える受験勉強のシーンに
ちょっとくだらない怒りを覚える。まあ、軽く。
ひたすらに彼氏にからむ北乃きいが思いのほかよい。
なんか適当で、フラフラしてて、でも不良じゃなくて。
その温度、今だなあと。
2009年3月5日木曜日
2009年3月4日水曜日
中年の諦めない悲哀「少年メリケンサック」
さすがに心動くところはなく、常に悪ふざけ。
まあ、悪ぶる女子もカワイイんだけど、そこまで。
やはり、大人計画の遺伝子はなかなか受け継がれることもない。
あの世界感をポップとともにお届けできる役者陣って
ある意味すさまじい選民機能だなあと思う。
何よりも思ったのは、いつまでも夢追ってても
本人たちとは関係なく残酷に時間は流れてることの切ない中年。
パンクバンド3人のどうしようもない力の入り込みと
空回りっぷりと夢なんか叶うわけないというリアルと。
そのなかで、少しだけ道がひらけるけど
それはエンターテイメントとしてははるかに飛距離が足りない幸せで
そこでよしとしようよとはっきりと現実を思うクドカンの
ふわふわしない根っこの強さとか非情さを感じた。
まあ、話としての面白さとかよりは瞬発力をただただ楽しむ
ショートムービーなので体調よくないと連戦連敗。
笑わないとセンスないもの、みたいな変な空気がよくなくて
終わった後のまわりの最初に何いうかみたいなせめぎあいが
気持ちの悪い感じだった。



