2008年6月24日火曜日

尊敬。井上雄彦。「最後のマンガ展」@上野

わざわざバガボンドを一巻から最新刊まで

漫画喫茶で一気読みして駆けつけた。そのかいあり。

宮本武蔵、その最後の日に何を見たのか?

その漫画。

美術館で歩きながら、空間を感じながら、漫画を読む。

コントロールされた身体サイズの空白。景色。時間。

一定の歩みで流れていくコマの動き、巨大な絵姿。

裁断された小空間。セリフの行き来。

何もかもがベタなのかもしれない。でも、それでいいのかも。

もう分かりやすく、そして深く感動。

物事を分かりにくく、ひねりあげ、間違いがないように、

深く深く沈むことができるように作り上げる力も

凄いとは思うが、ならば、普通にエンターテインメントを

語らない方がいい。もう一対一の勝負だ、それは。

たくさんの客がそれを楽しむことなど、早いこと放棄した方がいい。

そこと勝負し続ける、客がいることを意識し続ける、

ショービズに居続けることのきつさや美しさが昇華した

本当に見事な美術展だった。

泣けるもの。

筆遣いとかすさまじい。何かを表現するためだけに磨かれた

技術だからだろう。伝えるために線が徹底して引かれる。

刷毛で墨がこすられ、のばされ、散らされる。

美ということだけでなく、楽しませる、人の人生に作用する、

そのために使われる筆運びは、心ににょきにょきと

入り込み、ねじあがり、すいこまれていく。

いやいや、どうしたら、こんな線に進化したのだろう。

継続や数というのは、重要なのだなあと反復による

人の能力の格段の進歩を知って、たのもしく、うらやましい。

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