まったく建物の姿が見えない地中美術館。
中に入っていくと、広がる安藤忠雄ゾーン。
自然の中にある、この人の建築は本当に美しい。
やっぱり、コンクリートの壁の向こうにあるものは
断然の自然であるからこそ、あのつるつるコンクリートが
映えるのだといつもいつも思う。東京のは嫌い。
そして、ぐるぐると回る回廊や、斜めに傾いた壁、
自分の目線の部分だけが切り取られた壁など、
様々な形で自分の感覚が日常から剥ぎ取られていく。
そして、なんだか自分の感性がリフレッシュした先に
美術作品が。暗い闇の先に、光が冴える作家のわずかばかりの
作品が贅沢に展示。どれも身体まるごと浸る形のもの。
クロード・モネの睡蓮は、白い壁と白いタイルに囲まれた
真っ白な部屋に掲げられ、絵からあふれ出す色を体感できる。
絵のふちが空間に溶け出して、自分がそこにぐいっと吸い込まれる
不思議な気持ち。空気そのものが、絵に支配されていく。
それから、ジェームス・タレル。オープン・スカイは相変わらず
見たことあるはずの空の青を、まったく見たこともない澄んだ青に
変えてくれる。
もうひとつのオープンフィールドは、光の中に身体を沈めていく
ような作品で、夕焼けのような真っ赤な光に、突っ込んでいく、
自分の身体もこんな光の粒粒で出来ていて、溶け込んで気持ちがいい
そんな未知の実体験が出来た。
なにより、写真とまったく違って、行ってよかったと思ったのは
ウオルター・デ・マリア。バカデカイ黒い玉のある巨大な部屋の
周囲には27体の金箔の塗られた彫刻が整然と並んでいる。
そして、空が抜けている。空の光は刻々と変わり、玉に映る金色も
空色も一時も止まっていない。
そして、全体が大きな階段で出来ている。登ったり下ったり。
座ったり、立ったり。時間の流れをひしひしと自分の中で
くっきりと感じることのできる神々しい皮膚感覚。
あんまり聖的なものって感じないんだけど、もうちょっと泣きそうだった。
神様、いるなあと思った。
あとは、この今という時間は、昔とも未来ともつながっているなあと
センチメンタルな気持ちになった。
地中から出ると、そこにあったのは水平線だった。
また、これが、時間を感じる、
昔昔の地下から今、この瞬間が過ぎる地表に出たのに、
昔から変わらない水平線が見えるっていうあたりのロマン。
すばらしいです。
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