2009年12月15日火曜日

心の奥底に潜る「ザ・ダイバー/野田MAP」@東京芸術劇場小ホール

精神科医が殺人を犯したであろう女の気持ちの中に

どんどん潜っていく。女は多重人格でことあるたびに

あらゆる人格になって立ち上がるのだけれど、

まあ、いちいちドロドロと粘りつく。愛情と憎悪がからむ。

シーンは能やら源氏物語やら現在やらを次々にジャンプして

一見複雑だけど、そのおかげで女の気持ちがなにも

今という時代に特殊なことじゃない、

普遍的な強い気持ちなんだと思わせてくれる。

単純な流行とは違う、もっと人間なら誰でも

もってきたんだなあ、独占欲とこわくなる。

「ひとりの気持ちを自分のものにしたい」という

正妻と愛人の想いのやりとりが4人も子どもを

葬り去り、しかも、それが確実にひとりの人格を

壊しきるというリアル。

深く潜っていけばいくほど、見てはならないけれど

みなくてはならない、人の愛情の深淵がひろがって

気持ちにどーんともたれかかる。

何してもいいやという正義は

法律での正妻に認められているのか?

だけれども、その正義によって

自分の気持ちを持ち崩し、壊れていくその人自身の

かなしみとかわびしさ。

うーむ、深い。ダイバーだけに。

新しい生命とか、連綿と続いていく命とか

そういう人類が持つ生命力みたいなもので終わり

一見、救いありそうだけど、そんなこともないだろう。

人が壊れる恐怖を見事に大竹しのぶが演じきる。

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